2014/9/21 第70回最高の居場所ライブ・開催報告
「おもしろき こともなき組織を おもしろく」
ゲスト:松下信武さん(ゾム 代表)
渋谷区文化総合センター大和田
———————————
9/21に開催いたしました、第70回最高の居場所ライブの報告&お礼で投稿しております。
ご一緒した37名の皆さま(うち初めてご参加の方8名)、ありがとうございました。
今回のライブをサポートいただいたカワちゃん(川口弘美さん)が、開催報告をまとめてくれました。
カワちゃん、詳細にまとめていただき、ありがとうございます!
下記、ぜひご覧ください。
※事例を共有いただいた松下信武さんと植村哲也さんには掲載の許可をいただいております。
———————————
今回のゲストにお迎えした松下信武さんは、昨今高校野球チーム(今夏甲子園を沸かせた「山形中央高校」)のメンタルコーチとして、各地の新鋭チームを指導していらっしゃいます。
● とうりょう挨拶
テーマの「おもしろき こともなき組織を おもしろく」
高杉晋作の詩(おもしろき こともなき世を おもしろく)より引用しました。
松下先生(ラリーさん)は、腰が低い方です。
NECでも、キャリアコンサルタントとしてお世話になっています。
50歳を過ぎてからこの道に入ったと聞いて勇気づけられました。
第一部は、松下さんの人となりを紹介
第二部は、参加者の事例を元にして松下さんと話していただく
第一部のナビゲートは、あおこさんが担当、
● 松下さんの人となり
42歳で独学で始める
52歳でコーチとして生きていくと決めた。
EQの会社立ち上げ
前職は、クチコミ・マーケティングをやっていた。
心理学ベースにしたマーケティング。教育もやった。
教えてもらって一番良かったのは、「現場の大切さ!」
底辺の人たちを大切にすることが大事だと思う。
松下さんのお話に対して、ご参加の方からたくさんの質問がありました。
その一部をご紹介します。
● 質問: メンタルコーチとしてどの程度専門性が必要ですか?
⇒人によって違うが、私の場合、心理学をベースにして対応している。
スポーツのメンタルコーチとしては、その競技の技術の専門性は、ゼロ。
スポーツや技能五輪選手の基本の動きは、その都度勉強して取得する。
目標と現実のギャップを見つけて、どんな理由でそれが起こるのかを心理学的に考える。
私の場合は、全てのコーチはできない。
エクゼクティブコーチの場合、「クライアントは、自分自身を見失っている時」対応できる。
自分に自信がなくなっているクライアントは、私は得意です。
ビジネスの場合、自分の得意分野を持つことが大切。
グローバル戦略展開が得意なエグゼクティブコーチもいれば、国内の不採算部門の立て直しを得意とするエグゼクティブコーチもいる。
● 質問: 今どの辺に軸足を置いていますか?
⇒もともとは、河合隼雄先生から習った深層心理学
現時点ではマーシャ・リネハンの弁証法的行動心理学を習得中。スポーツ心理学も使っている。
野球で言うと
ノーアウトランナー2、3塁の場面、この状況をどう思いますか?
感情:めちゃめちゃピンチに思う。
事実:だが実際は、ランナーが2塁と3塁にいるだけ、点は入るかもしれない。
感情と事実とは違う。
1)感情から不安になる。
2)この場合、不安を一旦受け入れて
3)それから、なんとか切り抜けようとする。
不安があると->自分を責めてしまい->弱気になる
自然を受け入れること、これが大切。
今日は、失敗例を示す。
ソチオリンピックの時、スケートチームのメンタルコーチをやっていた。
その時の失敗談。
長島選手、加藤選手(金メダル候補)
コーチ陣は、分析をして34.7秒を出せば、勝てると想定。
しかし、実際は、オランダのシーメケンス選手が、34.59秒を先に出してしまい、チームは、切り替えできなかった。長島選手も、加藤選手も34.7秒台を出したが、及ばなかった。
この時の失敗の要因
1.コーチが予測を失敗してしまった
2.メンタルコーチとして私にも責任はあった。
オリンピックの前にオランダの試合があった時に、JOCの科学班はオランダ選手の変化に気づいた。しかし、私はその変化の意味に気づかなかった。
メンタルといっても総合力なんだ! 情報力なんだ!
とことんまで調査しないといけない。
今考えると「おかしい」と思ったけど、メンタルコーチとしての自分の役目ではないと思って言わなかった。これがいけなかった。
それへの対応として、いつでもおかしいと思ったとき、チームメンバーには何でも言える信頼関係を作っておく事が大切。
● 質問:違和感をキャッチするための訓練方法は?
⇒私の場合、考えてみると危機意識でキャッチしているようだ。
自分の人生観からきていると思う。
危機感がないと、警報として感情が機能しないと思う。
考え抜くことで危機感を感じられるようになると思う。
● 質問:感性、本能的に気づくのか?
⇒感性が豊かであったり、本能が鋭く働く人もいると思う。私の場合は情報の合成をして論理的におかしいと感じるタイプだ。
意見:松下さんは、相手の表情の変化を見ているように思える。
⇒相手が納得されているかどうか見ている。目の動きなどで読む。納得していないとき、一瞬だが、焦点が定まっていない。
表情分析で、 感情を読み取ろうとしている。
● 質問:不安を扱う --恐怖とは?
⇒選手は不安があっても、前向きに集中できる状態をコーチは作る。
(自然) 悲しみは自然な感情。 抑えるとうつ状態になるリスクがある。
(社会的) ねたみは自分が持っていないもので、ある人が持っているものと比較して発生する。これは社会的な関係から生まれる。
ビル・ゲイツは、私たちが持っていないような大金を持っているが、社会的には非常に遠い存在で、かすかなねたみしか感じない。
しかし、隣人が大金持ちになれば、そうとうきついねたみの感情を持つ人が多くなる。
不安は、自然 – 未知のものは、不安を感じる
不安の機能は、リスクマネジメント
不安はあったほうが、生き延びられるチャンスが大きくなる。
そのためのものだ。
選手に、不安はリスクマネジメントだと教える事が大切。
感情と事実の切り分けを行わせる。
野球: 2アウトからピッチャーが打たれる理由は、早く終わりたいという気持ちがそうさせる。
企業: 成功体験に溺れてしまう
リスクを持っていることに気付かせるのがコーチの役目
不安は警報、不安をいかに使いこなすかが、大切
対応として
意識の世界は、教育可能と考えている。
無意識の世界は、愛とか慈悲が重要な働きをしていると思う。
・情報ハブの話
山形中央高校野球部が、強い理由の一つが、
情報ハブの役を務める選手がいること。
選手は、監督に面と向かって言えないことがいっぱいある。
武田君(情報ハブの選手)は、選手の声をすくい集めて、有効な情報に編集して監督に伝えていた。
彼がいることで、必要な情報がスムーズに伝わる。
企業でうまくやっている事を、利用して高校生にも利用している。
企業の場合、これからは情報ハブの役割が大切になると思う。
トップダウンの戦略を伝えるには、
トップからのメッセージ->情報ハブ社員->伝えたい所に直接行く->トップのメッセージを分かりやすくトランスレートして伝える
現地の話を聞き取って->情報ハブ社員->内容をトランスレートして->トップにフィードバックする
トランスレートとは:話す相手に合わせて、内容はそのままで話がうまく伝わるようにチューニングして伝えること
・とっさの時のリラックス
一流の選手は、とっさのときに不要な身体の力を抜くことができる
普通の選手は、緊張で筋肉が硬くなる。
力を抜けば、記録が出る可能性がある。
闘争心を最高に持って来た時に、身体の力が抜けると最高のパフォーマンスができる。
● 質問:やってみてうまくできなかった事より、やらなくてうまくいかなかった方が、後悔が大きいのは何故か?
⇒クルト・レヴィン ドイツ人
彼の発見した心理現象をツァイガルニック効果という
やり残したものは、覚えている
やり終わったものは忘れてしまう
やり残したもの、失敗は記憶に残る
対応策:失敗した時の理由をしっかり考えて言い換える。
Must ⇒ Wantに変換する
ねばならぬ ⇒ ◯◯したい
アドバイス
とことん考えると迷いがなくなる
打たねばならないと思う気持ちが、あせりを呼ぶ。
打ちたいという気持ちを素直にうけいれたうえ、どうすれば打てるかに集中する。
・モチベーションの方向性
ゴールオリエンテーション - ほめられたい 優勝して栄冠を手に入れたい
タスクオリエンテーション- 課題をどう解決するか
スポーツでは、試合本番はTaskに意識を集中させることで、成果が出せる。
ビジネスでは、時がゆっくり流れるので、両方のバランスを取りながら仕事をすることは可能と考える。
—————————————–
ここから第二部、ナビゲーターは、コージ兄とまこどん
植村哲也さん(哲パパさん)に事例提供のご協力をいただきました。
● 哲パパさんの事例
哲パパさんは、人事本部の研修部所属
社内の有志で、勝手にチームを作り、社員と組織を元気にする勉強会を開催。
その後、社長に提案して認められ社内で正式な本社勉強会を1年間実施。
50クラスまで運営したが、2年継続した活動を、2012年12月をもって終了し解散。
その壮大なストーリーを開示いただきました。
その中のトピックスは、
・哲パパさんの「フローになったので、人の潜在能力の可能性を体感した」話。
・潜在能力を発揮させるために、勉強会(ポジ会)を立ち上げた様子
・会社創業50周年で、勉強会を正式な活動とした時のエピソード
・順調な滑り出しから50クラス立ち上げ、昼食の話し合い会、と活動が拡大していく様子
・ついに訪れた2012年12月のチーム解散
● 松下さんコメント:
共同体が分解するのは、リーダーのモチベーション ダウンが原因のケースが多い。
リーダーの情熱が覚めると、実践共同体の寿命はつきると言われている。
今回のケースでも、ポジ会メンバーは、準備のために、自分の時間を使ってやることに疲れてしまった。
● 質問:また再開するならどうする?
⇒再結成、やるなら方向性を決めて新しく作る。
目的は、フローな社員を増やすこと。5年で社員の5%を目指す。すなわち、1日1人。
フローの意味:流れるように自然に上手くいく、まったく不安がなく、ミラクルが出そうな感じで、力が抜けていて、自分の力が全て出せる状態のこと。
● 質問:どうして哲パパさんは、フローに入ったの?
⇒できたことに感謝したらそのモードに入った。このモードに入ると、考えなくても答えがぽっと浮かんでくる。頭や体の回転が10倍速になり、人が本来持っている能力が100%発揮できる状態。
● 松下さんの解釈
何が起きたのでしょう。
御社は、業績がいい。業績がいい企業は、変わろうとしないのに、何でポジ会や本社勉強会を開催したのか。
哲パパさんは、業績がいい裏で起こっていることへの、違和感を感じていた。
でも、現実に何かが起きている。その兆候にアンテナが反応した。
・哲パパ 何かが起きているんです。
創業者は、81歳で健在。
だが、このままでいいのか?不安を感じる。
● 松下さんへの質問:
今日は失敗談を話していただいた。やろうかやるまいか迷っていることに対応するにはどうしたらいいか?
⇒三振には、2つある
ただの三振
ピッチャーをビビらせる三振
どちらがいいですか?
————————–
ライブの様子は以上です。
下記に、皆様からいただいた「心に響いたこと」及び感想をご紹介します。
(共有の許可をいただいています)
・やらなかったことへの後悔、が響きました。自分が死ぬ時、やらずに後悔することがないように生き抜きたいです。(植村哲也さん)
・ラリーさん、本当にありがとうございました。
大きい組織にいて、あの時聞いていたら、と思うことも多かったです。
不安とうまくつきあう。まきこみながら、まきこまれる。しっかりやっていきます。(上田比呂志さん)
・違和感を大切に。やらなかったことはずっと残る。巻き込み上手は巻き込まれ上手。たくさんの気づきがありました。(おーちゃん)
・情報ハブ、不安、フローなど、知らない言葉や情報をいただきました。(ケイティさん)
・最も響いたことは、最後の質問のお答えです。
びびって三振するな!びびらせる三振をしろ!
やりつくしたい。やりつくさせてあげたい。(H.Mさん)
・ネガティブな感情は重要なメッセージ
実践協働体、不安をうまくつかう (くみ+さん)
・不安、悲しみなど、自然な感情、ネガなものは大切、役に立つリソース。
情報ハブを育てる。実践協働体(巻き込み、巻き込まれる) (tanaさん)
・すべて、といいたいところですが、違和感と不安を否定しないこと。(ゆりおさん)
・自身がずっとマインドフル(フローのベース)な状態で、参加できたことが、心に残っています。
参加者との関係性・未来への可能性を信頼しきっているからこその安心感の中でとても心地よい状態で参加できたように感じます。
「違和感を感じる感性をみがくこと」「やらない後悔より、やってみること」
「情報ハブになること、なってもらうこと」「巻き込むなら、まずは巻 き込まれてみること」
「勇気づけの声掛け、本当にその人その時に合った心に響くメッセージを伝えること」
私も心に響き、思わず目が熱くなってしまいました。感動をありがとうございました^^ (やすもんさん)
以上です。
他にもたくさんのご感想をいただきました。ありがとうございました。
P.S.
懇親会にて。。
フューチャー川柳のバタヤンこと川端健一さんから、松下さんへ川柳のプレゼントがありました。
下記、その時のメッセージをご紹介します。
——————————
ま 巻き込まれ
つ ツーアウトから
した 支度して
ラ ラストチャンスに
リー リーチ一発
——————————
松下さんからは、「たいへん素晴らしいプレゼントをありがとうございます。大切に保存します」とのこと、とても喜んでいらっしゃいました。
バタヤン、一日のフィナーレに華を添えていただき、ありがとうございました♪
——————————————–
松下さんのメンタルコーチの現場でのお話は、情報ハブ、不安を扱うお話など、はたらく場との共通点を多く感じました。
懇親会でも続いていた、哲パパさんのフローのお話と巻き込み力、ご参加の皆さんの熱気が印象的な一日となりました。
事前準備から、この開催報告に至るまでご協力いただいた松下さん、哲パパさん、
ご参加いただいた皆さま、サポートいただいた皆さまに改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
開催報告と御礼まで。。
——————————————
皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。
9月ライブ事務局:
久保 青子(あおこ)・ 立見 晃司(コージ兄)・ 依田 真門(まこどん)
特定非営利活動法人はたらく場研究所-最高の居場所