第91回最高の居場所ライブ『幸せに過ごすための脳科学』
ゲスト:駒野宏人さん(ひろさん)
実施日時:2016年8月20日(土)13:00-17:00
実施場所:目黒中小企業センター 第1集会室
参加人数:30名
運営事務局:SOL、しょご
今回のライブに登壇いただいた、脳科学者でプロコーチでもある岩手医科大学駒野宏人さん(ひろさん)との出会いなどをSOL、しょごから紹介して始まる。
【チェックイン】
椅子だけの円座ではなく、スクール形式による座席前後の参加者4人で、自己紹介(①名前、②幸せを感じるとき)を共有した。今日は幸せを脳科学的にひも解いていきます。終了時は、「楽しく、合点」を目指します。
【内容】
1. 幸福について
① 脳内にある快・不快回路について
② 身・口・意・絆の影響
③ 幸福感を与える神経伝達物質・ホルモン
2. ストレスを乗り越えるための脳科学
願望達成の脳科学
3. 幸せとマインドフル瞑想
欧米に比較して日本では幸福学の研究者は少なくその一人の慶應大学前野隆史教授は、2種類の幸福に分類している。ひとつは、地位財という所得(かね)、物的財、地位など、もうひとつは、非地位財で健康、社会への帰属意識、自由、自主性、愛情など。幸福の持続性では非地位財は長く、個人の安心・安全な生活に重要。その非地位財の中で大きく4つの幸せ因子に整理した。
1)「やってみよう」因子:自己実現と成長
2)「ありがとう」因子:つながりと感謝
3)「なんとかなる」因子:前向きと楽観
4)「あなたらしく」因子:独立とマイペース
アドラー心理学では、幸福とは、
1) 自分が好き
2) 他人が信頼できる
3) 貢献している
とまとめている。
今日は脳科学的にひも解くので、人類の誕生から伝えます。
地球ができて46億年、人類が誕生して500万年、進化の過程で人類の遺伝子は7万年前の祖先と比べて変わっていない。
我々の脳は、生存・繁殖を脅かすことを回避するように進化してきた。
先回りして危険を避ける不快脳が優れている。
不快だから我々は生き残った。
危機管理能力に通じるのでネガティブでも不思議はない。
だから、人間は地位、確実性、自律性、関係性を脅かされると視野が狭くなり敵しか見なくなる。闘争本能・防衛本能から集中力が高まる。ただし守備範囲は狭い。
1.①快、不快回路について
不快回路は、生存脳、サバイバル脳
不快→逃げる、固まる、戦う。危険の回避行動
快回路は、スライブ(繁栄)脳、社会脳、PQ脳
快・安心→創造性、共感など、報酬への接近行動
人間の脳には3つの動物が住んでいる。
・大脳皮質 知性など「人間らしく生きる」ための高度な精神活動のための機能
・大脳辺縁系 動物が「たくましく生きるため」ため原始的な本能や情動および記憶の機能
・脳幹 動物が「生きる」ための生命維持に必要な機能
その中で大脳辺縁系には、不快感情は扁桃体、快感情は側坐核、記憶は海馬などがある。
②言葉、姿勢、思いが変われば脳から出てくるホルモン・神経伝達物質が変わることが分かってきた。つまり、身・口・意(体、言葉、意)・絆が感情に影響を与える。
身:運動、睡眠、姿勢
口:呼吸、言葉による効果
意:考え方による効果
絆:関係性による効果
ひとは幸せだから笑うのはなく、笑うから幸せになると言われているが、脳科学的に証明されている。笑うと快回路が働くため、脳から幸せを感じるホルモン・神経伝達物質が出てくる。
身:姿勢との関係では、ハーバード大学社会心理学者Amy Guddyが、2つのポーズを2分間交互にとるだけで明らかにホルモン変化をもたらし、脳の状態を変えたと報告している。
ハイ・パワー・ポーズでは、被験者は主張的になり、自信をもち、ストレスを感じなくなり、落ち着いた。一方、ロー・パワーポーズでは、内気になり、ストレスに敏感になった。
この実験で、ハイパワーポーズをとるだけで、自信に溢れ、パワフルな気分になれるということが証明された。
言葉・イメージ・姿勢が、身体のパワーや認知機能に影響を及ぼすことを、実際に[個人ワーク]や[ペアワーク]を通して体験した。
これらのことから、姿勢や行動、態度で「幸せなフリをする」ことが大事で、同時に引き寄せる効果がある。また、ポジティブ心理学の成果として、人間の脳はポジティブな気分の時にもっともよく働くようにできており、幸福な人は成功する。つまり、幸せは成功に先行することが報告されている。
③絆:関係性
オキシトシンは絆ホルモンとか愛情ホルモンと言われ、オキシトシンがあることで人を許したり、仲間を守ったり、利他的になる。
このように社会生活を円滑にするオキシトシンは、多い人と過ごすと一緒にいた人もオキシトシンに満たされるようになる。他者への感謝、思いやりによってもオキシトシンは増える。
オキシトシンを分泌する方法
1) 親切にする
2) 感動する
3) 感情を表出する
4) マッサージ、タッチ
5) 愛する人と精神的に支え合い、スキンシップをとる
6) ハグをする
7) ペットをなでる
など
信仰でも神に畏敬の念を持ったり、愛を感じたり、感謝したりすることで、オキシトシンが増え、他者への感謝や思いやり、慈悲の気持ちが起きるようになる。
「自分が幸せになりたければ、他人を思いやりなさい」by ダライラマ14世
他人が行ったことを自分が体験したかのように脳が反応する時に活性化するのがミラーニューロン。自分が幸せを感じると、周りの人も幸せを感じる。
仏教の「慈悲の瞑想」(Loving-Kindness Meditation)では、継続することで、喜び、感謝、満足感、自尊心などのプラス感情が増え、さらに痛みや不安、怒り、ストレスが減る。
オキシトシン:仲間を守る作用(信頼、愛情)、利他的
バソプレッシン:個体の生体維持する作用(不安、恐れ、攻撃性)、利己的
一方、オキシトシンのダークサイドとして、オキシトシンが分泌されていると好きな人にはより親切になるが、不快なことをされて敵だと思うと徹底的に相手が嫌いになり攻撃性が増す。
幸せになるためには次の4つが大事
1) 幸せのふりをする
2) 思いやり、感謝、親切
3) 五感の心地よい刺激
4) 慈悲の瞑想
2.ストレスを乗り越えるための脳科学
ストレスを受けると3つの神経伝達物質で血中濃度が上がる。
・ACTH・・・・・・・・・・副腎でコルチゾールを産生
・コルチゾール・・・糖代謝、脂質代謝を上げ、ストレスに関係ない免疫機能・成長を抑制する。など
・カテコールアミン・・・・交感神経を興奮させる(血圧、心拍数をあげるなど)
アドレナリン、ノルアドレナリン
ストレスを解消するためには、ノルアドレナリン(不足すると意欲減退、無気力)、ドパミン(不足すると無関心になり運動機能低下)とのバランスが大事。そこでは、セロトニンが重要な役割を果たしている。セロトニンは、精神を安定させる役割を担っていて、ノルアドレナリンやドパミンの分泌をコントロールして暴走を抑える。
運動、楽しいこと、好きなことをするとドパミン分泌される。
[ペアワーク]を通して、ストレスを緩和する方法を確認した。
ストレスを乗りきるためには運動、コーピング、瞑想は効果的。
さらにリフレーミングやビリーフチェンジ、人生の目的の意味付けによってよりよく乗りきれる。リフレーミングとは、出来事の枠組みを(フレーム)を変えることで、人生の選択の幅を広げ、どのような出来事にも必ずプラスの意味があることを教えてくれる。
<願望達成の脳科学>
• 夢・願望
➢ 逆算思考
➢ ドパミンについて
• 願望達成
➢ 現状:自己効力感
➢ 目標の設定
未来記憶
記憶について
未来記憶をつくるポイント
引き寄せ
➢ 実現する人の行動
<夢・願望>
ハーバード大の調査結果では、夢を持ち明記した人は、夢のない人に比べて10年後の年収は10倍、夢を持ち書くまではしなかった人は、夢のない人に比べて年収は2倍になった。
<願望達成>
ドパミンは、幸せ感のひとつ
意欲を担う神経伝達物質:ドパミン ⇒ ワクワク感 ⇒ 目標達成 ⇒ 幸せ感
出来そうだと思うと報酬回路が活性化しドパミンが産生される。
願望達成は行動しない限り起こらない。
<究極の目的>
Q:どんな人生を送ったら、良い人生ですか?
・人生に目的を持つこと。人生にミッションを持つことで生きる力が強くなる。特に人としての在り方、ピークエンドルール(何かを卒業するときに良かったか悪かったか。最後の経験がすべて)
・自分の能力に自信を持つこと。大きな目標は小分けにする。スモールステップ。
・成功とはなにか。自分が決めること。成功に向かって何をするのかが大事。
<未来記憶>
海馬の記憶 短期記憶⇒ワーキング記憶、長期記憶⇒エピソード記憶(覚えやすい)
自分の夢が叶った時、他人も幸せになる。⇒自分の夢実現が貢献になっている。
未来記憶の創り方
願望をアウトプットする。
*ビジョン・ナラティブ
*宝地図
*ドリームマップ
3. 幸せとマインドフル瞑想
地球幸福度指標では、日本95位/143か国
健康を保つ
➢ 運動(有酸素運動、無酸素運動、ストレッチ:成長ホルモン、ドパミン、免疫関連物質などが産生される)
➢ 食べ物(糖質制限、油の質)
➢ 人とのつながり(社交性):オキシトシン
➢ 生きがい
➢ 自然と接する:自然欠乏症候群
<時間感覚>
認知プロセスが多いと時間が長いよう感じる。
ワークを通してそれを体験した。
時間感覚を伸ばすためには、
1. 学び続けること
2. 行ったことのない場所を訪ねる
3. 新しい人と会う
4. 新しい活動にチャレンジする
5. 自発的になる
特に緊急ではないが重要なことを実行すると脳の若さを保つ上で効果的。
勉強、自己啓発、人間関係作り、リーダーシップ、真のレクリエーション、健康維持。
ここを充実させると時間がエネルギーに変わり、貢献・創造に繋がる。
マインドフル瞑想
マインドフルとは注意深さ、留意することの意味
➢ マインドフルネスで憎しみや苦しみといった負の感情を抑える
➢ マインドフルネスによって強化される集中力はストレスによる闘争本能からくるものとは質が違う。視野が広く客観的でもある。
マインドフルネス瞑想は判断をしないで、気づく、受容すること。今この瞬間の思考、感情、感覚へ注意する。瞑想によって脳の構造が変わる。ストレスが緩和され、メタ認知能力(客観的視点)の向上がみられる。炎症抑制、病気予防、ダイエット効果がある。瞑想は心の基本設定を戻す。至福の状態にし、することモードからあることモードになる。
まとめ
1. 幸せのようにふるまう
2. 思いやり、親切、感謝、貢献
3. 五感に心地よいことをする
4. 許し
5. 夢・生きがい
6. 健康(運動、食べ物、睡眠、自然との接触)
7. マインドフル瞑想、慈悲の瞑想
8. 時間感覚(チャレンジ、学習、新しい体験、新しい人、マインドフルな生活)
=====参加者のみなさまの感想(アンケートより抜粋)=====
「年齢とともに幸福感が下がる日本をV字回復させたい」という駒野先生の言葉に、本当に共感しました。
(みさえさん)
日々生活していて、幸せというものをあまり意識していないということに気づきました。
なにかひとつ心に響いたというより、先生のすべてのプレゼンが心に響きました。
(間健人さん)
ハイ・パワーポーズを朝礼で実践。
マインドフルネスを始めてみたいと思います。
紹介されている文献を読んでみます。
(らくださん)
今座禅に毎日取り組んでいるのですが、これとの融合を考えていきたいと思います。
駒野先生と意見交換する機会をいただきたいと思いました。
(千葉英世さん)
駒野先生の熱意に感動しました。
脳科学の知見が、幸せにつながる。新たな発見でした。
定年世代の夢実現コミュニティ(セカンドライフ研究会)に取り組んでいます。
本日学んだことを、さっそく会の取り組みに活用させていただきたいと思います。
(冨岡康夫さん)
持ち帰って活用すること。
・机にPCを置けるよう机の上のものを片付ける。(姿勢よくPCできるようにするため)
・快の気持ちで応用問題を解く。(試験勉強がなかなか進まない理由が分かった)
・感謝の気持ちで今を生きる。
(かんなさん)
私はタイ式瞑想を学び続けていますが、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスがよくなり、朝スッキリ目覚められるようになりました。
そんな今の自分に必要なことをタイムリーに教えていただきました。
オキシトシンがここまで影響するとは、正直思ってなかったです。
(木村裕理さん)
認知症の母を介護して希望のないことも多いのですが、今日いただいた知識で、何かブレイクスルーできたら、と思います。
心臓に負担をかけられない状態なので、運動も難しいですが、有酸素運動でなく筋肉をつけることを考えてみたいと思います。
(J.T.さん)
幸福に生きるための5つを実践したいです。
①運動 ②食べ物 ③人とのつながり ④生きがい ⑤自然と接する
(H.M.さん)
お話しくださるひろさんの笑顔がすばらしく、お話を聞いているだけで幸せな気持ちになりました。ありがとうございます。もっと時間をかけて、さらにお話を聞ければと思いました。
(Waka)
以上、8月ライブ事務局は、しょご(木越省吾)とSOL(立岡里司)でした。