第90回最高の居場所ライブ
「寄り添う対話が人生をひらく~心理カウンセラーと探る働くこと、生きることの意味」
ゲスト:鈴木雅幸(すずりん)さん
実施日時:2016年7月24日(日)13:00〜17:00
場 所:東京ウイメンズプラザ
参加者:53人
運営事務局:りり〜、まなぶん、しん
今回のライブ運営メンバーより 鈴木さんをゲストにおよびした経緯や思いを皆様へシェアさせていただき いよいよライブスタートです。ゲスト鈴木雅幸さん(すずりんさん)は 4か月近くに渡り、書籍(感情は「5秒」で整えられるbyプレジデント社)のご出版に伴い過密なスケジュールの中 ライブ準備の深いところまで日々関わってくださり この場づくりに魂をこめてくださいました。
当法人代表理事とうりょうからメッセージ。「眼の前に見えている一瞬のこの場に宿っているものに、背筋がピンと張るような集中できる感覚が伝わってくる。この場づくりにおける準備そのものも 人と寄り添うことのひとつのヒントになるのではないかと思う。」
【チェックイン】
グループごとに 「お名前、期待すること、今の気持ちを一言」
【本日の流れ】
①鈴木さんのストーリーテリング
②カウンセリング現場での事例紹介(手紙朗読)
③ケーススタディ (セルフワークとグループワーク)
① 鈴木さんのストーリーテリング
はじめに鈴木さんから、12年前のこの7月、この仕事を始めることになったいきさつと思いを語っていただきました。トラックのお仕事をしていた33歳のとき、ピーター・ドラッカーの「明日を支配するもの」という一冊の本に出会い、セカンドキャリアについて考え、それが人生を変えるきっかけとなりました。欧米では、一つの仕事で生涯終わることなく、満を持して第二のキャリアに移行するのが当たり前になりつつあるということを知って、ご自身も一念発起、覚悟を決め、カウンセラーという仕事を選択されることに。
そして、鈴木さんの師となるカウンセラー吉田哲氏との出会い。自ら変わろうと選択するとき、出会うメッセージを見逃さず自ら求め続ける姿勢が、今の鈴木さんをつくっているのだと感じました。「カウンセリングの現場では綺麗な理論や勉強や資格取得だけでは 大切な人を守ることはできない。」ご自身が具体的に厳しいトレーニングを重ね、実践し続けて来たからこその静かでありながらパワフルな言葉が深く聞く人に響きます。
12年間を振り返って最も多かった相談内容は「職場の人間関係」。働く場にはままならないことが多い。日常に密着する難題をどう乗り越えていけるのか、日々話し合う中で働くこととはどういうことなんだろうと考えさせられる12年。答えがない問いの答えを探すことを続けて来た中で導きだしたひとつの答えとは。
◆私たちは何のために働くのか「働くことの意味は?」
私たちは 学び 成長するために この場にいる。成長の道のり(プロセス)は険しいことも多いが そこ こそに学び 成長の機会がある。自分が成長することは 生きる上で大きい喜びのひとつである。
◆相談者が問題を乗り越えるために 何が必要なのか
「寄り添うこと」「わかち合うこと」
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「寄り添う対話で大切なこと」について
○傾聴
相手の話を一語半句もらさず 違わずに正確に聞くこと、聞けること
○寄り添う
相手と同じ気持ちになってそこにいること
相手の悲しみ、痛み、苦しみ、喜び、驚き、感動、怒り、そして絶望などを共にわかち会うこと。
○わかち合い=共感(共感的理解)
「相手の言いたいこと、訴えたいこと、わかってほしいことを、言いたいままに 訴えたいままに
わかってほしいままに 理解すること」(吉田哲)
◆傾聴のチェックポイント
「相手が一番言いたいこと、伝えたいことは何か」がわかっているか
◆わかち合い(共感)のチェックポイント
「そうです、その通りなんです」と相手が思わず反応を起こす「投げ返し」になっているか
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鈴木さんがいつも大切にしている心得は、クライアントの立ち直る力を 限りなく信じること。もし信じられなければ 余計なこと(アドバイスや自分の考えetc)を言いたくなってしまう、そこにあるものをあるままに聴くことの難しさ、大切さが伝わってきました。
② カウンセリング現場での事例紹介
クライアントからの手紙2通を朗読させていただきました。
・「アップルタルト」(りり〜朗読)・・・人と関わることが苦手で職場の人間関係で悩んだ相談者が 人との出会いを糧にして乗り越え、また自らの一歩をあらたに踏みだすことができた、というお話。
・「避難所から戻って」(おだみん朗読)・・・東日本大震災の被災地で支援活動をする相談者が、被災者に寄り添うこと、共感することとは何か、人との関わりかたに直面し悩む姿とその後の心の動きをつづったお話。
手紙を読む二人の声が会場にしみ入るように満たされていく中で、それぞれの手紙の内容がリアルな感情の動きを率直に書いたもので心を揺さぶられました。カウンセリングを受けて自ら何かを選ぶという行動にいたるプロセスをつづったもので、会場の皆様が一緒に一心に聴いてくださっている姿がとても印象的でした。
ここで鈴木さんから「寄り添うとは何か」についてお話。頭だけでわかったではなく、実際に乗り越えていった事例から学ぶことが大切。リアルな難題に取り組んでいただくことによって、みなさんの職場や 生活の場に活かしていただきたいということでした。
③ ケーススタディ
実際の相談事例を紹介。東日本大震災の被害を受けた小学6年生(女子)からの問いかけに、あなただったらどう応えるか。寄り添う対話で大切なことを意識して、問いかけへの答えをつくり、その根拠も説明できるようにする。個人ワークでそれぞれの答えをつくり、その後、グループワークでひとつの答えを作り、それぞれ発表するというもの。
【鈴木さんからのヒント】
・この子はなぐさめてほしいんでしょうか、癒されたいのでしょうか
・この子の一番いいたいことをわかっていますか
・それで本当に受け止めてもらえたと実感できるのでしょうか
鈴木さんからの場への投げかけは真剣で厳しいものでした。
その後のグループの発表は各チーム真剣に話しあい、工夫しあい、個性豊かな表現方法でそれぞれに相談者の女の子を真剣に思う心のこもった内容でしたが・・・果たして 鈴木さんの答えは!?
【鈴木さんによる解説(全体)】
・これほど自分が相手に投げ返す言葉を時間とエネルギーをかけて考えたことがこれまでにあっただろうか。
・実際の現場ではカウンセラーは瞬間に応えていく必要がある、
・今回は短い時間で体験してもらったが、実際はこのトレーニングを厳しく妥協せず、さらに長い時間をかけて繰り返し行い、反射神経を磨いてゆく。
・答えにたどりつくプロセスが大事
・一言の重みを実感する
・つくりもののワークや理論の講義では伝わらない生の声に向き合う体験を通して反射神経を身につけてゆく
・まず慰めたくなってしまうことが多いが、その前に他に相手が訴えたいことは何かを探る
・相手にはままならない気持ちがある。どうしたらよいか真正面から受け止めてほしい。
(まず受け止められた実感が相手にないと受け取れない。受け止めずにいきなり慰められてもそうじゃないと思われてしまう。)
・真正面から受け止めてから「自分の言葉に置き換えて」投げ返す。
これまで 自分が「共感」と思ってやっていたことは「共感」と呼べるものではなかったということに 気持ちが揺れました。寄り添いたいという思いだけでは寄り添えない。共感してるつもりで同情したり 解決モードになったり、相手が感じてる気持ちをなかったことにしてしまったり。相手の中にあるものをあると受け止めるっていう、とてもシンプルなことがこれほど難しいこととは。寄り添うためには寄り添えるだけの力が要る。
でも今日そのことに気づけたのだから、そこから歩みを進めていこうと心に刻みました。一人の女の子の声に応えるために、この場にいた全員が真剣にその問いかけに向き合い、心を注いでいた場の光景とともに。今回は通常のトレーニングにかける時間を短縮して体験版として学んでいただいたため、各グループ発表へのフィードバックやさらに深い部分につながる取組みができませんでしたので、ぜひ第2弾をロングバージョンでという声もあがっております。
【参加者からの Q&A】
Q★ リアルなケーススタディにはどういう意識で向き合えばよいか
A★ きわめてシンプル、相手が訴えていることは何だろう、音声は消えていくから記憶にインプットしながら一語半句もらさないで聴く。聞き間違いがないように。
Q★ 一語半句聴いているつもりでも、わからないことがでてきたらどうするか?
A★ わからないことをわからないと認める(わからないことをわかったことにしない)わかることとわからないことをわけることが大切。
Q★ ハードな相談を日々うけて疲れませんか?
A★ 相談にその人自身が現れているのでいくらでも聴ける。(厳しいトレーニングの上ではある)そしてその人が気づいた瞬間の素晴らしさ、そこに一緒にいられる素晴らしさがある。
【チェックアウト】
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〜とうりょうから〜
受け止めることの大切さ。人は自分が「伝えたい」のほうが先にあることが多いので、その前に相手を受け止めるのは容易ではない。命がけで生きている人に寄り添うことは受け止めることの本質。魂をこめてぶれないで受け止める。
=====参加者のみなさまの感想(アンケートより抜粋)=====
・魂を込めたライブありがとうございました。カウンセリングの基本(傾聴)をもっともっと大切にしたいと思いました(なお八さん)
・傾聴、相手の話を一語半句もらさず違わず正確に聴くこと、聴けること、に精魂込めた内容に響きました(木越省吾さん)
・相手の本当の姿が出たときは素晴らしい瞬間である。その瞬間に立ち会えることが幸せである。久しぶりに傾聴の大事なポイントを復習できました。(けろっつさん)
・言葉にならないことを言葉にするのが カウンセラー。クライアントの立ち直る力を限りなく信頼する、一言の思いを感じて生の声と向き合う キャリアカウンセラーとして 初心にかえる時間になりました(みさえさん)
・傾聴の在り方の深さ、そして 逆にシンプルさが響きました。シンプルにあることの難しさも改めて感じた時間でした(SOLさん)
・聴くことの深いところ、聴くことの本質を学ばせていただきました(カワちゃん)
・ワークの中で鈴木さんのヒントに少しずつ視点が深まり 文章の見方が変わっていくのを感じました。言葉をひとつひとつ読み込み 返す言葉を魂を込めて考えるという貴重な経験をさせていただきました。(wakaさん)
・「相手が一番言いたいこと、伝えたいことは何か」だけを聴く、リアルな傾聴ワークを体験できて学びになりました(くみさん)
・カウンセリングとコーチングの違い、自分はいつもコーチング寄り(問題をどう解決するか)で 未来型思考(はげましタイプ)なので 寄り添うをもっと意識したいです(うめちゃん)
・まず相手の気持ちや考えを受け止める、すべてはそれから・・。(こやぎん)
・「学び」は日常の中にあふれていること。いちばんむずかしいままならない人間関係が職場にある。日本は文化的に 察する力、くみとる能力にたけている(KRさん)
・答えにたどりつくまでのプロセスが大事、いかにして一つ一つの想い、智恵をくみ取り、まっすぐに向き合うかがあって 初めて答えにたどり着くのだと思いました。額に汗しながら 丁寧に人と物事に取組み 誠実にことにあたろうと思います(佐藤さおりさん)
・「寄り添う」ということの奥の深さをとても感じました。表面的なことではあく 相手の言葉の一語半句をしっかり聴いて まず相手が何を一番に言いたいのかを知り、そこから「寄り添う」が始まるのだなとおもいました。実生活でも活かしていきたいです(NTさん)
【一日を終えて】
カウンセリングの現場での相談者からの問いかけはすぐに答えがでないものが多いと思います。そこに寄り添い応えるための言葉は単なる答えではなく、感情や思考を形や音にしただけのものでもない。誰かが答えを持っているわけではない問いかけにどう応えていくのか。その人の内側から生まれた問いかけを その人自身が 創り出す現実の人生につなげていく支援とは何か。相手がこの問いから何を創り出したいかに真正面から向き合い続ける、可能性というより、その人の存在まるごとを信じて 寄り添い続ける鈴木さんの在り方。
鈴木さんがこのお仕事を選択されたときの、「これが正解かどうかもわからない。でも自分はつらくても続けていけるような仕事を選び、この世界を追いかけていきたい」という在り方は、私たちの生き方にもひとつの道を示してくれているように思いました。どんな道を選んで歩いていくか それが小さい一歩でも選ぶのは自分自身なのだということ。そのために、人の気持ちに寄り添い、わかち合うことをあきらめずにやっていくことは、職場や家庭や学校や、人が営む全ての特別でない日々の暮らしにこそ大切なことだと忘れないで持ち続けたい。
この4か月間近く運営メンバーに「寄り添って」くださった鈴木さんはとことん「厳しく」「真剣」なかたです。それは、よくある感情的な冷たい厳しさとは、違います。佇まいはとても柔らかく静か、さりげなく全方向に人に対する思いやりに溢れている。「厳しく」という言葉を口にされるときでさえ受け取る側に何か温かいものが流れてくる、その温かさはきっと常にご自身が 答えのない問いかけに真摯に向き合い続けた証なんだと思いました。
鈴木さんが創り出したい未来は、学校のいじめ問題の解決法を体系化して、それを全国の学校に浸透させていくこと。さらに人柄を育てる教育を家庭、学校、そして企業に浸透させていくこと。100年先でも大きな成果が出ているような、そんなビジョンです。ひとりひとりの今この瞬間の積み重ねが必ず描く現実につながっていくと実感しています。
最後に こぼれ話をひとつ。会場の部屋の外の廊下に警備員のかたが一日いらしたのですが、朝からの準備を見守りつつ開催中は会場から漏れ聴こえる内容を耳にされていたらしく、ライブ終了後に「最高の居場所 いいね、人生かくありたい」とメッセージをいただきました。会場の外にまで参加者がいたことはもしかしたら初めてのこと。運営チームにとっても嬉しく励みになる出来事でした。
終了後の懇親会では、鈴木さんがひとりひとり全員とお話される姿が。そして、居場所メンバーのバタヤンからサプライズで鈴木さんへ川柳のプレゼント。
す のままに
ずき んとひびく
まさ にこれ
ゆ らぐことなし
き もちをきけば
【ゲストプロフィール 鈴木雅幸さん】
心理カウンセラー / 企業研修講師 / 元スクールカウンセラー
心理カウンセラーとして、12年間で 4,000回以上のカウンセリングを実施。スクールカウンセラーとして学校教職員の研修、保護者への講演と教育相談、1,000回以上の児童のカウンセリングを行い、不登校・いじめ・学級崩壊の問題に取り組み、数多くの現場の改善に貢献。 現在もカウンセリングの傍ら、私塾『臨床カウンセラー養成塾』にてカウンセラーの育成を行う。一般の人たち向けに、「カウンセリング」「自信を深める」「人間関係」などのテーマで勉強会・講演を行っている。一部上場企業や中小企業にも企業研修講師として招聘され、カウンセリング要素を活かした社員教育を実施し、好評を博している。 著書『感情は「5秒」で整えられる~一流ビジネスマンが実践 仕事はメンタルで決まる!』(プレジデント社)は、発売11日目で重版となる。
以上、7月ライブ事務局は、折戸瑛里佳(りりー)、進藤明美(しん)、西川学(まなぶん)でした。(まなぶんは当日欠席)